「慰めすら、みじめに感じた──。」──映画「スノードロップ」@新宿武蔵野館。
2025年 10月 10日
「生活保護が国民のセーフティネットの最後の砦」と言われるようになって久しいが、
果たして本当に貧困に苦しむすべての人々に行き渡るように機能しているだろうか?
クルマを持っていてはダメとか、ひと昔前はエアコンがあってもダメなどと
いう信じられないような話があった。
一方、10年ほど前、役所に生活保護の申請をした翌日に病気の両親と共に一家心中を
図ったが、娘だけが死にきれなかったという傷ましい事件があった。
何故、この一家は「国民の権利」として誰もが認められている生活保護という
セーフティネットに頼ることを潔しとしなかったのか。。。
その部分にスポットを当て、自らも病気のために生活保護受給経験を持つ吉田浩太監督が
脚本・監督を手がけた話題作「スノードロップ」が本日から新宿で公開となった。

母・キヨと暮らす葉波直子(西原亜希)の元へ、長年蒸発していた父・栄治が帰ってくる。
突然の父の帰宅に困惑する直子だったが、迎え入れたいという母の要望を受け入れて父と暮らしはじめる。
10年ほどが経過し、キヨが認知症を患い、持病が悪化して仕事ができなくなった父を抱え、
一家は生活保護の申請を考えるようになる。直子は生活保護を申請するため市役所に出向き、
ケースワーカー・宗村とのやり取りを重ねて申請作業を進めていく。
母が重度の認知症で、父も病気で仕事ができず、預貯金もほとんどない状態の一家は
生活保護を受けるに十分な資格があった。宗村も献身的かつ親切に対応することで
生活保護申請はスムーズに進み、役所の訪問審査も受けて生活保護の受託はほぼ決まった。
が、その審査を無事に終えた夜。栄治は直子にある一言を告げる。。。……。
この作品には、某自治体のように生活保護申請をむやみに断ったり、却下する冷たい職員や
外国人は一切登場しない。むしろ申請者の家庭に温かく寄り添い、なんとか審査を通そうと
する親切で真面目な職員ばかりだ。
その一方で、血縁関係者に連絡を入れたり(今は必要なくなったらしいが)、預金額や
賃貸の場合は家賃、申請者の生活状況(以前はどのような仕事をしていたか、
今はどうやって暮らしているのかなど)を細かく聞かれ、書類に記入しなければならない。
その過程で直子は10年以上も認知症の母の介護を一人で担ってきたことが明かされる。
何故、介護申請をしなかったのか。。。
おそらく新聞配達員という父の仕事の給料では家賃を払い、日々の生活を賄うだけで
精一杯だったのだろう。
あるいはその制度の存在さえ知らなかったのかもしれない。
以前、勤めていた時の事務の仕事でも、自分に自信がなくて内向的なイメージの
彼女の姿が描かれる。母の介護を通してヒッソリと静かに生きてきた彼女は
何故、父が投げかけた一言に素直に頷いたのだろうか。。。
◆ ◆ ◆
上映終了後はおよそ15分間のトークイベントが開催された(このイベントは16日まで続くらしい)。

そのトークの中で、この作品が3年前に撮影され、カイロなどをはじめ、日本や海外の
コンペティションを経て、今回ようやく新宿武蔵野館で公開にこぎ着けたことを
聞いて驚いた。実際、劇場公開を応援するためのクラファンも立ち上がっていたらしい
(知らなかったけれど・汗)。
そして主人公を演じた西原さんも担当職員を演じたイトウさんもオーディションによって
選ばれたという。特に台詞が少なくて背中で語ることの多い直子の役は苦労が
多かったことだろう。
タイトルにもなっている「スノードロップ」の花言葉は「希望」(「死」という意味もあるが)。
※写真は借り物です。

それにしても「人としてのプライド」を根本からズタボロにする生活保護制度って
一体何なのだろう? 疑問を持たざるにはいられない。
すべての人々が誰にも何の気兼ねもすることなく「国民の権利」を享受できるように
なる日が来ることを願ってやまない。。。
エンドクレジットに流れる主題歌もとても良い。
観終わった心に染みいってくる。。。
とても考えさせられた作品でもあるので、☆4.4を進呈。。。
おつかれさまでした☆
こんばんは。
良かれと思い動くこともやさしい気持ちも時にして人を傷つけることがあるのですね。
パートナーは12歳で父親を失って、義母は5人の子どもを女手一つで育てました。
中学の時、奨学金をもらっていたそうですが、昔は振り込みもなく直接お金が支給されていたとのこと。
その都度、職員室にとりに来るよう放送があって、とても肩身の狭い思いをしたといっていました。
父親を失ったことだけでも大変なことなのにつらかったと思います。
でもそれが勉強の動機にもなったとも言っていました。若いうちにお金持ちはなく、それは親のお金ですから、苦学生の彼を尊敬していました。
おっしゃるようにすべての方々が気兼ねすることなく支援を受けられる社会になるといいですね。
良かれと思い動くこともやさしい気持ちも時にして人を傷つけることがあるのですね。
パートナーは12歳で父親を失って、義母は5人の子どもを女手一つで育てました。
中学の時、奨学金をもらっていたそうですが、昔は振り込みもなく直接お金が支給されていたとのこと。
その都度、職員室にとりに来るよう放送があって、とても肩身の狭い思いをしたといっていました。
父親を失ったことだけでも大変なことなのにつらかったと思います。
でもそれが勉強の動機にもなったとも言っていました。若いうちにお金持ちはなく、それは親のお金ですから、苦学生の彼を尊敬していました。
おっしゃるようにすべての方々が気兼ねすることなく支援を受けられる社会になるといいですね。
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akaiga-beraさま
コメント有難うございます。
久々に色々と考えらさせられた作品でした。
最近ようやくメディアなどでも取り上げられようになってきたようです。
お連れ合いさま、子どもの頃から大変な苦労をなさったのですね。
そのために校内放送があるなど、どんなにお辛かったことでしょう。
が、そのことを己の勉強への励みにすることができて本当によかったです。
以前、地元の薬局で「生活保護の人はジェネリックの薬しか出してもらえないの、わかる?」と
薬をもらいに来たおじいさんに大声でまくし立てている受付のおばはんがいました。
混んでいる薬局で、あんなに大声を出さなくたって。。。
皆、会話をやめてシーンとしておじいさんに注目していました。
以来、私が、その薬局を利用しなくなったのはいうまでもありません。
何の権利があってそのおじいさんを皆の前でさらし者にして虐める権利が
あのおばはんにあったのでしょう?
世の中のすべての人々弱い人、貧しい人に対して、もっと優しくなれる世の中であってほしいものです。
コメント有難うございます。
久々に色々と考えらさせられた作品でした。
最近ようやくメディアなどでも取り上げられようになってきたようです。
お連れ合いさま、子どもの頃から大変な苦労をなさったのですね。
そのために校内放送があるなど、どんなにお辛かったことでしょう。
が、そのことを己の勉強への励みにすることができて本当によかったです。
以前、地元の薬局で「生活保護の人はジェネリックの薬しか出してもらえないの、わかる?」と
薬をもらいに来たおじいさんに大声でまくし立てている受付のおばはんがいました。
混んでいる薬局で、あんなに大声を出さなくたって。。。
皆、会話をやめてシーンとしておじいさんに注目していました。
以来、私が、その薬局を利用しなくなったのはいうまでもありません。
何の権利があってそのおじいさんを皆の前でさらし者にして虐める権利が
あのおばはんにあったのでしょう?
世の中のすべての人々弱い人、貧しい人に対して、もっと優しくなれる世の中であってほしいものです。
by forestkoro1015
| 2025-10-10 17:49
| 映画作品・TV作品
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